繰上げ支給を請求すれば、60才から受給できます。

 特に、昭和16年4月2日以降に生まれた男性で厚生年金の期間の長い人は老齢基礎年金の「一部繰上げ」が有利です。


一部繰上げとは
 昭和20年4月10日生まれの一郎さんは、会社の規定で、来年4月に定年になります。特に、次に働く予定もありません。一郎さんの場合、通常は定額部分の年金や配偶者加給の支給は63才です。

 これでは、63才まで、報酬比例部分の年金だけでは生活がなりたたない。できれば定額部分も、60歳からもらいたいと考えました。

 それを打開する道が、63才からもらえる定額部分を63才以前に繰り上げて請求する方法です。

 しかし、「定額部分の年金」を繰上げて受給すると、同時に「老齢基礎年金」の受給も義務付けられます。

 とはいっても65歳支給の老齢基礎年金の「全部の額」ではありません。「一部の額」です。それで、これを老齢基礎年金の「一部繰上げ」といいます。

定額部分は損をしない
 定額部分の年金を60歳からもらっても損はしません。それは、63才から65才までの2年間に受給できる定額部分の合計額を60才から65才になるまでの5年間で、均等割りにして支給するからです。

 2年分を5年で均等割りしますから、63才でもらえる額の「5分の2」が60才から受給できます。

老齢基礎年金は70%支給
 老齢基礎年金の一部の額は60才から受給するわけですから、この分については70%支給です。

 老齢基礎年金の一部の残りは65才支給です。つまり、老齢基礎年金は「60才」と「65才」に分けて支給されます。

 一部の額は繰上げ請求をした60才から65才になるまでの5年と、60才から定額部分の支給開始年令の63才までの3年との割合から算出します。割合は「5分の3」ですから、老齢基礎年金の「5分の3」を60才から、「5分の2」を65才からもらうことになります。

  具体的な算出方法を図示すると次のようになります

注1)特例支給開始年齢になると加給年金が加算されます。
  2)「繰上調整額」は次の式で計算されます(ただし、定額部分の厚生年金保険の
   被保険者期間の月数は最高444月とされます)

 3)「経過的加算」は「定額部分」から「基礎年金相当部分」(厚生年金保険の被保
   険者期間にかかる老齢基礎年金の年金額)を差し引いて得た額です。
 4)「一部繰上の老齢基礎年金」の支給額は次の式で計算されます。
5)「老齢基礎年金の65歳以後の加算額」は次の式で計算されます。
「全部繰上げ」と「一部繰上げ」は、どちらか一方を選択します。
「全部繰上げ」は60歳から65歳前までの間に請求できますが、「一部繰上げ」は60歳から特例支給開始年齢になる月の前月までの間に請求することになっています。
60歳から特別支給の老齢厚生年金を受けられる昭和16年4月2日〜昭和21年4月1日生まれの女子は、「全部繰上げ」を請求できますが「一部繰上げ」は請求できません。
「全部繰上げ」と「一部繰上げ」の老齢基礎年金の額は、生涯にわたって減額されます。