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 是正勧告を受けた。立ち入り調査の事前連絡があった。この際、労基法関連の社内体制を整備したいという場合、まずはご相談ください。ご相談はこちら

 平成15年度の賃金不払い残業による是正総額は、実に239億円になることが厚生労働省から発表されました。

賃金不払残業の解消については、平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が構図べき措置に関する基準について」(参考‐1)を策定し、重点的に監督指導を実施するとともに、さらに平成15年5月には「賃金不払残業総合対策要綱」(参考‐2)、及び、「賃金不払残業の解消を図るために構図べき措置等に関する指針」(参考‐3)を策定し、その解消に重点的に取組んでいます。

 厚生労働省では今後とも、重点的な監督指導を実施するとともに、本年11月を「キャンペーン月間」と位置づけ監督指導を強化するとしています。

是正対象となった企業数は1,184企業、対象労働者数は194,653人、企業平均では2016万円になっています。

 是正勧告を受けたがために、過去に遡って一度に多額の残業代の支払が発生し、企業が経営の窮地に陥ります。

 労働基準法第101条第1項によれば、「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」として、労働基準監督官の立ち入り調査の権限を定めています。この立ち入り調査のことを「臨検」といい、臨検の際に労働基準監督官は、法違反に該当すると認められる事項について是正を勧告することがあります。これを「是正勧告」といい、通常、是正勧告書という書面が交付されます。

 是正勧告は、あくまでも「行政指導」とされています。したがって是正勧告に基づく改善は、あくまでも任意の協力によってのみ実現し得るもので、法的強制力があるものではありません。

 しかし、是正勧告を受けたということは、それ自体で「法違反の事実があった」ことを意味しますから、非協力や無視などは"大変な結果"をもたらすことになります。

 労働基準監督官は、労基法違反の罪については、司法警察官の職務を行うものであることを忘れてはなりません。

労基法遵守のための使用者の諸義務
 (イ)法令規則の周知義務
 (ロ)労働者名簿の調整義務
 (ハ)賃金台帳の調整義務
 (ニ)記録の保存義務
 (ホ)報告・出頭義務
 〔行政官庁または、労働基準監督官は、労基法の施行の  ために必要あるときは、使用者又は労働者に対して、必要な 報告をさせ、または出頭を命ずることができる(104条の2)〕
 それでは次に、是正勧告の実施状況を見てみます。

 〔厚生労働省労働基準局‐統計資料〕による平成14年度の監督指導実施状況によれば、労働時間と割増賃金項目が圧倒的多数を占めています。(具体的には以下の通りです)

労働時間 就業規則 割増賃金 労働条件の明示 賃金台帳
順 位 1 2 3
4
5
件 数
29,351
17,509
17,077
8,712
7,600
 このデータから是正勧告に対する事前対策のポイントが見えてきます。是正勧告対策を念頭に置いた労務管理のポイント、制度整備が重要です。

  労働者が監督署に申告(俗に言うタレこみ)で問題が表面かするケースも良くあります。労働者から申告があった場合、監督署としてはこれを無視することはできません。このような場合監督署はどのような対応をするでしょうか。

 平成13年9月に厚生労働省労働基準局長通達(基発852号)では「労働者からの申告・相談等の対応に当って留意すべき事項について」として、次のような内容の方針が出ています

【申告・相談に対する対応】

 申告内容が労働基準関係法令違反を構成するおそれがある場合は勿論、法令違反を構成するおそれがない場合であっても、問題点が推測されるため、次のように対応する。

1) 申告内容の処理にとどまらず、その会社の労働条件の問題点を注意深く聴取し、監督指導を実施することが適当かどうか判断する。

2) 監督指導を実施するかどうかの決定は署として組織的に行う。

3) 業種・業界に共通する労働条件の問題点が存在すると考えられる場合には当該業種・業界等を改善対策の重点対象として取り上げる

 

 この指針からすると労働者から申告があった場合、申告があった事案にととまらず、その会社全体の違反状況まで聴取され、監督指導される可能性があります。割増賃金の不払いに端を発し、就業規則、36協定の未提出、安全衛生管理体制の整備、労働条件の明示などあらゆる点をチェックされることになります。

 「是正勧告書」を受けて、その勧告の内容についてどのように対応するのかを、事業主は労働基準監督署に報告しなければなりません。これが「是正報告書」と言われるものです。

 「是正報告書」には勧告内容に沿って、違反事項、指導事項、是正内容、是正年月日を記載するとともに、必要に応じ添付書類を加えます。

 労働基準監督官に事情を説明し期日を調整してもらうことも可能ですが、放置したままというのは許されません。当初期日は守る必要があります。

 <コメント>

 是正勧告を受けた場合に、事業主または立会人が法令を知っていないためにそもそも労働基準監督官の話が理解できないケースが往々にしてあります。是正勧告の内容が理解できなければ、是正のしようがないわけですから、労働基準監督署の臨検、出頭の場合には労働法に精通した専門家に依頼することが必要になってきます。また、是正対策、報告書の作成についても専門家を利用するのが有効と思われます。

労働基準監督署から立ち入り調査の事前連絡があった。是正勧告を受けた。この際、労基法関連の社内規定、体制を整備したいという場合、ご相談ください。